「ほら見てごらん。耳の中にこんな長い綿を詰めているんだ。もう六十年、医者も諦めた。でもこうして、なんとか生きてる。郵便車やタクシーに乗って、立派な家も建てた。体が健康なんだから大丈夫。反省したら、すぐに出られるよ」
宿南口の人混みをかき分けて甲州街道を渡ると、新宿じゃ貴重な広い空の下に、バスタ前のこれもこの街で随一のゆとりある歩道へたどり着いた。
推しが泣いている。今まで一度だって、真実の涙を見せなかった彼女が、好きなキャラが非業の死を遂げる回のアニメを泣くために観るわたしみたいに、泣いている。